産めない女

2016 / 1940×1120, oil and tempera on cotton

私自身の経験を元に構想した、不妊を抱える女性と、ケージの中で卵を産む鶏を重ね合わせた作品。
自室にて「産めない女」に扮した私が鶏女に変態していく。

私たちは気づけばこの社会に産み落とされていて様々な苦しみの中生きている存在です。
私が排卵障害に陥った時、初めて毎月卵を生んでいたことに気づかされました。
毎月繰り返される排卵に、ケージの中で毎日卵を産む鶏の姿が重なりました。

映画「ベイブ」によると、鶏を含む牧場の家畜にはそれぞれ役割があるらしいのですが、産めない鶏は殺されてミンチ肉になるそうです。

では「産めない女」の役割は何でしょうか?
近年女性の社会的な地位が向上し、出産の重要性を取り沙汰されることが多くなりました。
「動物」と「理性」の間で生きるのが人間ですが、この社会という枠組みの中で女性だけがそのどちらかを選ばなくてはなりません。
シンギュラリティ以降は「産む」という言葉自体なくなっているのかもしれないので、一時の(もしくは最後の)憂いかもしれませんが、この世界の苦しみから解放されるには「死」しかないという点で、檻の中の鶏と私たち人間は同じなのかもしれないと、今の私は思うのです。

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