春と修羅

2016 / 1940×2240, oil and tempera on cotton

春と修羅
spring and shura

おまへの武器やあらゆるものは
おまへにくらくおそろしく
まことはたのしくあかるいのだ
みんなむかしからのきやうだいなのだから
決して一人をいのつてはいけない
ああ わたくしはけつしてさうしませんでした

漫画「特攻の拓」の天羽セロニアス時貞が画中にて吟じていたものが、宮沢賢治の詩「春と修羅」の一節だと知ったのはつい最近のことでした。
天羽は不良漫画における異端児として描かれ、到達できない場所にたどりつこうと苦悩した末に事故死してしまう不運のキャラクターとして描かれました。その漫画を読んだ時、「スピードの向こう側」という言葉で表されたものと、その先にある「死」というものがどういうものなのかわかった気がしたのです。

すべてがわたくしの中のみんなであるやうに
 みんなのおのおののなかのすべてですから

「私」という人間はすべての中の一部であり世界も私の中にあるすべてである、という宮沢賢治のこの感覚を私はなんとなく理解できたような気がしました。
私と世界とはどうしようもなく一体であるのです。
私の身体の心臓というポンプが血液を流し循環し体内にエネルギーが満ち日々細胞が生まれ死滅しているということが、宇宙の星の明滅と循環と日々膨張し収縮しているそれらと重なっていること。これらを自分の身体感覚において感じるのです。

手を頭に当てるとそれは宇宙であり光でありすべてである。(そしてそれは人における知性である)
腹に当てると上に立ち上るエネルギーである。(そしてそれは人における情性である)
胸に当てるとすべてを内包し包み込む大気である。(そしてそれは人における感性である)
口に当てるとすべてをのみこむブラックホールである。(そしてそれは人における意欲である)

ああ わたくしはけつしてさうしませんでした
あいつがなくなつてからあとのよるひる
わたくしはただの一どたりと
あいつだけがいいとこに行けばいいと
さういのりはしなかつたとおもひます

「生きる」とはどういうことなのだろう。
辛いことや大変なことがある中でこの混沌とした世界を生きていくということはどういうことなのでしょうか。飴屋法水さんの「ブルーシート」では震災と事故を切り口にして「生きる」ということそのものを問うていた気がしました。
「生きる」ということは、まさしく「春」と「修羅」なのだと思います。

It was only recently that I learned that what Mr. Tempa Seronias Shingo of the manga “Taku no Megumi” was examining in the picture is a passage of Kenji Miyazawa’s poem “Spring and Shura”.
Tempa was drawn as a heretic in a bad manga and painted as a misfortune character that suffered an accident at the end after suffering to reach a place where it could not be reached. When I read that comic, I felt I understood what it was represented by the word “across the speed” and what “death” lying beyond that.
I felt like I could understand this feeling of Kenji Miyazawa that “human being” is a part of everything and the world is all within me.
There is no doubt that I and the world are united.
The fact that the pump of the body of my body circulates and circulates, energies are filled in the body, the cells are born day by day, and the cells are dying, it is overlapping with those that are expanding and shrinking daily on the blinking and circulation of stars in the universe about. I feel these in my body sense.
When you put your hand on your head it is the universe, light and everything. (And that is intelligence in man)
It is the energy rising up when hitting on the belly. (And that is the passion in man)
It hits the chest and encompasses everything and encloses it. (And that is the sensibility in man)
It is a black hole that smts everything when it hits the mouth. (And it is motivation in man)
What does “living” mean?
What is it like to live this chaotic world in painful and difficult things? In the “Blue Sheet” of Mr. Sukiya Mr. Nishimizu, I felt like I was asking the question “to survive” with the earthquake and accident as a point of entry.
I think that “living” is exactly “spring” and “shura”.

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